遠距離介護は難しい?遠方で暮らす親の介護を成功させるコツとは
公開日: 2022年04月05日
更新日: 2022年05月20日
- 介護・高齢者施設
高齢の親に介護が必要になった時、同居して面倒を見られるとは限りません。 遠方に住む親の介護をどうしたらよいか、悩む人もいるでしょう。
ここでは、遠距離介護のメリットとデメリットについて確認します。 その上で、どんな準備が必要か解説しましょう。 遠距離でも上手く介護ができるようになるコツも、ご紹介します。
遠距離介護とは?
同居していない親族、特に遠方に住む人の介護をすることを遠距離介護と呼びます。 よくあるのは、実家を出て親と離れたところで生活している人が、時々帰省して身の回りの世話をするケースです。
毎日通うことはできないので何かと不安が多く、十分な世話ができないと悩む人もいます。 また、遠距離を行き来するので大変だという人もいるでしょう。
しかし、様々な事情から同居での介護ができない人もいるのです。
厚生労働省による2019年の国民生活基礎調査によると、要介護者の介護を主に行っている人のうち、別居の家族等は13.6%。 2016年の調査では12.2%で、この割合は少しずつ上昇しています。
核家族化や地方の過疎化が進む中、同居せず遠距離で介護をする人は今後も増えていくのではないでしょうか。
遠距離介護を選ぶ理由
遠距離介護となる理由として、まずは親の事情が挙げられます。 高齢になってから子供の家に引っ越すことには様々な問題があり、抵抗を感じるのです。 長年暮らした地域には、親類や友人がいます。
転居すれば、そのような人とのつながりが切れてしまうかもしれません。 また、かかりつけの病院で診てもらうことも難しくなります。
安心して治療を受け続けるため、なじみのある病院に通い続けたい人も多いでしょう。 一方、故郷を離れて生活の基盤を築いた子供の立場からみても、介護のために実家に戻るのは大変です。
仕事を辞め、住み慣れた土地での生活を手放して故郷に帰るのは簡単なことではありません。 特に配偶者や子供のいる人は、家族を置いて自分だけ親元に行くのは難しいでしょう。
このような事情から、遠距離での介護を選ぶことになると思われます。
遠距離介護のメリット
自分の生活を変更しなくてよい
ネガティブに捉えられがちな遠距離介護ですが、そこにはメリットもあります。 今までの生活を、大きく変える必要がないという点です。 実家に帰って介護をするなら、引っ越しが必要となります。
また、転居に伴い、これまでの仕事を辞めなくてはならないことが多いでしょう。 このようなことは経済的にも大変ですが、遠距離介護を選べば転居せずにすみ、仕事を続けることも出来ます。
これまでの自分の人生を大きく変える必要がないというのは、大きな利点と言えるでしょう。
ストレスや身体的疲労が少ない
実家に帰って介護に専念するより、遠距離介護の方がストレスや身体的な疲れが少なくて済むかもしれません。 一日中、要介護者の世話をしていると、身体に大きな負担がかかります。
自分だけで昼も夜もトイレの介助をし、入浴や食事の世話をしていると疲れ果ててしまう人もいるのです。 また、要介護者と一日中顔を突き合わせて生活していると、自分の時間が持てません。
どうしても本人のペースに合わせなくてはならず、ストレスがたまるでしょう。 その点、遠距離介護なら、介護中は頑張ったとしても帰宅後は心身を休めることができるのです。
介護保険サービスが受けやすい
遠距離介護をしていると、介護保険によるサービスが受けやすくなります。 同居していると公的な支援が必要ないと判断されやすいので、この点も遠距離介護の利点と言えるでしょう。
例えば、介護サービスには「生活援助」といって、介護スタッフが掃除・洗濯・調理などをしに来てくれるものがあります。 このサービスは、「家事のできる家族がいない人」しか受けられません。
また、特別養護老人ホームは希望者が多く、なかなか入居できない状況がありますが、遠距離介護だと入居の必要性が高いと認めてもらえることがあります。
遠距離介護のデメリット
緊急時の対応が困難
遠距離介護で特に心配なのは、緊急時の対応です。 突然、体調が悪くなった時、事故が起こった時など、すぐには対処ができません。
例えば、風邪をひいて寝込んでしまったとしても、遠方だと、すぐに駆け付けられないこともあるでしょう。 また、高齢者の場合、急に脳卒中や心臓の発作を起こして倒れてしまうこともありえるのです。
転倒してけがをしたり、入浴中に気を失って溺れてしまったりというような事故も見られます。 このような時、すぐに気付いて救急車を呼ぶことができないと、最悪の事態も考えられるのです。
費用の負担が大きい
遠方の親を気遣うためには、頻繁に電話しなくてはならないこともあるでしょう。 遠距離介護の場合は、どうしても電話代が高くなる可能性があります。
また、遠方になればなるほど、交通費の負担が大きくなるものです。 車での移動にかかるガソリン代や高速代、電車や飛行機を使って移動する人なら更に費用がかさむでしょう。
電話代は携帯のプランを見直し、かけ放題にするなど工夫したいものです。 電車の利用なら、新幹線の回数券等、お得な切符やサービスを探しましょう。
飛行機なら、介護をしている人のために特別な割引を設定している航空会社があります。
遠距離介護の準備
担当ケアマネジャーの決定
介護保険のサービスを受けるためには、ケアマネジャーに手伝ってもらう必要があります。 ケアマネジャーは、介護サービスや地域の介護事務所に詳しい専門家で、何かと相談に乗ってくれるでしょう。
ケアマネジャーを決めるためには、まず介護認定を受ける必要があります。 本人が住んでいる自治体の窓口で、認定を受けたい旨、申請をしましょう。
そうすると、高齢者本人に聞き取り調査が行われ、介護や支援が必要という認定を受けることができるのです。 そこで初めて、ケアマネジャーを紹介してもらうことになります。
ここまでの手続きは家族が本人と共に行い、ケアマネジャーと連携が取れるようにしておくことが大切です。
介護費用の話し合い
介護には様々な費用がかかるので、誰がどのように負担をするのか話し合いをしておきましょう。 本人の預貯金や生命保険の加入状況などを把握し、それで足りない分は親族内で相談する必要があります。
例えば、遠距離介護の場合、普段は外部の介護サービスを利用することになり、そのための費用が必要です。 介護サービスの多くは介護保険を使えば一部負担で済みますが、おむつ代などは全額自己負担となります。
介護サービスの負担金や限度額については、ケアマネジャーに質問して、しっかり把握しておきましょう。 将来的に施設入所を考えるなら、その費用も計算しておく必要があります。
住宅環境の整備
普段は目が届かない分、自宅内で安全・快適に過ごせるよう環境を整備することも必要です。 例えば、室内での段差をなくし、手すりをつけることで楽に移動できるようになります。
また、浴室で転ぶ事故を避けるために、洗い場の床を滑りにくいものに替えるなど、室内を見直してみましょう。 このようなリフォームには、介護保険が使える可能性があります。
更に緊急の時にボタン一つで通報できる装置や、見守りセンサーをつければ、突発的な事故に備えることもできますね。
遠距離介護のコツ
定期的に連絡をとる
遠距離介護をしている人は、本人と定期的に電話やメールで連絡を取りたいものです。 それが安否確認になると同時に、本人を安心させることにつながります。
例えば、親と離れて生活していると、用事のない時には電話もしないことが多くなるものです。 しかし、何も用事がなくても「ご飯は何を食べた?」「今日は暑いけど、クーラー入れてる?」など声かけをしましょう。このような会話を通じて、親の様子や健康状態が分かることもあります。 また、気遣ってもらっているということが伝わり、離れていても安心と思ってもらえるのです。
近所の人や専門家に頼る
離れて暮らしている親の介護には、ご近所の人や主治医、ケアマネジャーが頼りになります。 いざという時に、スムーズに対応してもらえるよう、きちんと連携をとっておきましょう。
ご近所の人には、「いつもお世話になっています」と挨拶をしておきたいもの。 何かあった時のために、できれば連絡先の交換もしておきましょう。かかりつけの病院に行く時には同行して医師と話をし、注意すべき点など聞いておきます。 また、ケアマネジャーにも直接会って、相談しやすい関係を作っておきたいものです。
サービスや制度を利用する
これまで介護サービスを使ったことがない人も、使えるサービスは積極的に利用しましょう。 それによって、本人も介護する側も楽になることが多いのです。
また、勤め先の「介護休暇」や「介護休業」の制度について確認し、利用しましょう。
病院の付き添いやケアマネジャーとの打ち合わせは、平日に動く必要があるので、有給休暇だけでは足りなくなるかもしれません。 介護のために設けられたサービスや制度は、できるだけ活用するのがコツです。
十分な準備と工夫で遠距離介護の不安をなくそう
離れて住んでいる親の面倒を見るのは、何かと不安が多いものです。 親に安心してもらい、自分自身も無理をしないために、知恵を絞って準備をしましょう。
介護サービスは積極的に使い、ケアマネジャーに相談しながら進めることが大切です。 また、こまめな連絡を欠かさないようにし、ご近所の人も味方につけることが安心につながります。
自分一人では限界があるので、制度や周囲の人の助けを借りて遠距離介護を成功させましょう。