失敗しない介護用品・福祉用具の選び方!在宅介護の負担を減らそう
公開日: 2022年11月25日
更新日: 2023年03月13日
- 介護・高齢者施設
高齢になって介護が必要になった時、自宅で介護を受けることを望む人が増えています。
このような時、必要となるのが介護用品・福祉用具です。 まず、介護用品と福祉用具の違いや、「購入かレンタルか」という問題についてみていきます。
介護保険を使って購入・レンタルする手続きについても、確認しましょう。 さらに、介護用品を選ぶ際、気を付けるべきポイントも解説します。
在宅介護のニーズの高まり
高齢になって介護が必要となった時、在宅で介護を受けたいと考える人が増えています。
病院や介護施設ではなく、自分や親族の家で介護を受けつつ生活をしたいという人が多いのです。
厚生労働省は、2012年に「在宅医療・介護の推進について」という文書を発表しました。 それによると、終末期の療養場所について、自宅で最期まで療養したい人、自宅で療養して必要があれば医療機関や緩和ケア病棟に入院したい人が合わせて6割以上にのぼります。
亡くなる前であっても、できるだけ自宅にいたいという人が多いことがわかりますね。
また、2007年に内閣府が行った意識調査によると、要介護になった時、自宅や子供・親族の家での介護を希望するという人が4割を超えています。
このように、シニア層における在宅介護のニーズは高いといえるでしょう。
介護用品・福祉用具とは
在宅介護のためには、本人の身の回り・自宅の環境を整えることが必要となります。
そのために用意すべきものが、介護用品・福祉用具です。 介護用品とは、介護に使われる様々な製品のすべてを含みます。
例えば、紙おむつや介護を受けやすい服、介護用の歯ブラシなどがありますね。 一方、福祉用具とは、介護用品の中でも、特に要介護者(つまり高齢者本人)の日常生活動作の維持や改善を目的とした製品を指すのです。
例えば、電動ベッドや床ずれ防止マットレス、ポータブルトイレ、シャワーチェアなどが福祉用具として挙げられます。
また、車いすや歩行器、歩行補助杖などが福祉用具とされますが、シルバーカーや普通のステッキはこれに入りません。
紛らわしいのですが、この製品は福祉用具、という対象品目が厚生労働省によってはっきりと決められています。
在宅介護を行うためには、必要に応じてこのような介護用品・福祉用具を用意しましょう。
それは、高齢者本人が快適に生活を送れるようにするためだけではなく、介護者の助けにもなるのです。
介護用品・福祉用具と介護保険
福祉用具と、それ以外の介護用品の大きな違いは、介護保険が使えるかどうかということです。
福祉用具として指定されている製品なら、介護保険から支給が受けられる可能性があります。
福祉用具の場合は、介護保険制度で定められた負担割合があり、それに応じてレンタル費(一部の製品は購入費用)の補助があるのです。 通常は1割負担(所得によっては2割または3割負担)となり、その分、安い費用で福祉用具の用意ができます。
一方、福祉用具以外の介護用品の場合は、介護保険の適用がありません。 そのため、費用は基本的に自分ですべて負担することになります。
介護用品のレンタルや購入を検討する際には、それが「福祉用具」にあたるかどうかを確かめることが必要ですね。
介護用品・福祉用具をレンタル?購入?
このように、原則として介護用品には介護保険の適用がありませんが、福祉用具には適用があることを覚えておきましょう。
また、介護用品・福祉用具を手に入れる手段はレンタルと購入の2つに分かれます。 介護保険ではレンタル(福祉用具貸与)を原則としていますが、一部購入できるものもありますよ。
これを、特定福祉用具販売といいます。 レンタルと購入のどちらがよいかは、以下のような点を考慮して検討しましょう。
福祉用具をレンタルするメリット
福祉用具をレンタルするメリットは、「必要なモノを、必要な期間だけ借りられる」という点です。
高齢者の場合、身体状況が徐々に悪化して、それまで使っていたものが役に立たなくなることも考えられます。
レンタルの場合は、状況に応じて、臨機応変に用具を借り換えることができますね。
また、不要になった後、置く場所に困らないですむのです。 メンテナンスなどのアフターサービスもレンタル事業者に任せればよいので、楽かもしれません。
福祉用具をレンタルするデメリット
ただし、福祉用具のレンタルにはいくつかの問題点もあります。 まず、介護度によってレンタルできるものに制限があるという点です。
例えば、車いすなどは要介護2以上という認定を受けなければレンタルの対象になりません。
また、レンタルはあくまで借りるものなので、汚したり壊したりしないよう気を遣う必要があります。
レンタル品は新品でない場合が多く、他人が使ったものを借りることに抵抗を感じる人もいるでしょう。
福祉用具を購入するメリット
レンタルとは異なり、福祉用具を購入するのであれば、介護度を気にする必要がありません。
また、自分自身の所有物になるので、汚すのではないかなど気を遣わずに利用できますね。 レンタルの場合、事業所にあるものの中から選ばなくてはならず、選択の幅が狭くなりがちです。
その点、購入だと、機種や新品か中古かなど、自分の判断で決められるというのも利点といえるでしょう。
福祉用具を購入するデメリット
福祉用具を購入する場合、一部の製品以外は介護保険が使えません。 また、身体の状況が変化して買い替えが必要となることもあり、レンタルより負担が大きくなる可能性があるのです。
また、レンタルとは異なり、使用した後、置き場所に困ることもあります。 捨てる時には、処分の手間や費用も必要です。
なお、一部の福祉用具購入には介護保険が使えますが、これには利用限度額が決められており、要介護度にかかわらず年間一律10万円までとなっています。
この金額を超えた場合、全額自己負担となってしまう点にも注意が必要です。
福祉用具を使うためには
介護保険の支給を受けて福祉用具をレンタルまたは購入するには、どのような手続きが必要でしょうか。
レンタルの場合
福祉用具をレンタルする際には、まずは、最寄りの地域包括支援センターに相談しましょう。
すでにケアマネジャーが決まっている場合は、その人に相談します。 ケアマネジャーは、ケアプラン(介護サービスを受けるための計画書)を作成してくれ、福祉用具のレンタル事業所を紹介してくれるでしょう。
なお、すでにレンタル事業所を知っていたとしても、まずはケアプランの作成から行う必要があります。
福祉用具のレンタル事業所には、必ず福祉用具専門相談員がいるので、その人と相談して本人に合ったものを選んでもらうのです。
この事業所が福祉用具を自宅に届けてくれ、本人に合っているか確かめてくれます。
その用具でよいと決まったら、その時点で事業所とレンタルの契約を結ぶことになるのです。
購入する場合
福祉用具のうち、購入できて、かつ介護保険の適用を受けられるものは、特定福祉用具と呼ばれるもののみです。 直接肌が触れるもので、他人が使用したものを再度使うことに抵抗があるため、レンタルが難しいものがこれに指定されています。
特定福祉用具となっているのは、腰掛便座、入浴補助用具、自動排泄処理装置の交換可能な部品、簡易浴槽、移動用リフトのつり具です。
このようなものを購入する場合も、まず、地域包括支援センターか、ケアマネジャーに相談しましょう。
その上で、都道府県から指定を受けている福祉用具販売事業者から購入します。 指定外の介護用品ショップから購入しても、介護保険の対象とならず、全額自己負担となってしまうので注意しましょう。
購入したのち、市区町村の窓口で申請をすると、購入費の支給を受けられます。
介護用品・福祉用具を選ぶポイント
住まいの環境に合っているか
介護用品は、住環境によって選び方が変わってきます。 自宅の構造や設備、本人が過ごす部屋の状況を考えて選びましょう。
例えば、介護用ベッドを用意する場合は、部屋の広さや床の強度なども考える必要があります。 移動用の手すりなどは、本人や介護者がスムーズに動けるように位置を考えましょう。
本人の自立の助けになるか
介護用品はあると便利なものですが、必要以上に援助をしてしまうと、本人の自立を妨げ、かえって身体が弱る危険があります。
今できていることの維持や、自分でできることを減らさないというのも、介護用品・福祉用具の大事な役割です。
例えば、トイレに自分で行けるなら、移動や立ち座りを補助する手すりを設置し、おむつだけに頼らないことを意識しましょう。
介護者の負担を軽くできるか
介護用品・福祉用具は、本人だけでなく介護者のためのものでもあります。 介護者が疲れすぎないように援助し、元気で介護を続けられることを考えて選びましょう。
使い勝手の良さを確認して、楽に使えるものを選ぶことが大切です。 手入れや操作が難しく、かえって手間がかかるようでは本末転倒ですね。
介護用品は専門家に相談しながら適切なものを選ぼう
在宅介護では、適切な介護用品があると、高齢者の生活が楽になり自立を助けてくれます。
介護用品の用意には費用が掛かるので、介護保険を使えるものは上手に使いたいものです。
購入かレンタルかでも大きく負担が変わってくるので、両方のメリットデメリットを比較しながら考えましょう。
また、住環境や本人の状況、介護者の負担も考えたうえで介護用品・福祉用具を選ぶことが必要です。
ケアマネージャー等の専門家に相談しながら、適切なものを選びましょう。
この記事に関連するタグ