家族の介護におけるストレスとは?解消法を知って対策しよう!
公開日: 2022年05月30日
更新日: 2022年05月30日
- 介護・高齢者施設
家族の介護をしていると、心身共に様々なストレスを感じることがあります。
ストレスを解消し、高齢者も自分も心穏やかに過ごすにはどうしたらよいでしょうか。
ここでは、まず、介護で起こりがちなストレスと、それによって起こる問題について見ていきましょう。
更に、ストレスの原因やそれを解消する方法についても解説します。
介護ストレスとは?
高齢者の介護をする家族は、心身共に様々なストレスを抱えていることがあり、これを介護ストレスと呼びます。
介護が必要な親や家族の世話をする中で、疲れ果ててしまうこともあるのです。
厚生労働省が行った調査(国民生活基礎調査「介護の状況」平成22年)によると、同居している家族の介護を主に担っている人のうち、60.7%がストレスを感じているとのこと。
その原因の中でも特に多いのが、家族の病気や介護ですが、自分自身の病気で悩んでいる人も目立ちます。
その他、自由時間がないことや家族との人間関係、収入や家計で悩んでいるという例も見られるのです。
つまり介護中の人が、身体的・精神的な負担を抱え、場合によっては経済的なトラブルにも悩んでいる様子が伺えます。
このような問題が、心身に大きなストレスを与えているといえるでしょう。
介護ストレスを溜めてしまうと
介護うつになる
介護によってストレスや疲れが溜まると、うつ状態になることがあります。
これは、「介護うつ」とも呼ばれるもので、疲れやだるさが長く続く、眠れない、食欲がないなどの症状がみられる時は、これを疑う必要があるでしょう。
例えば、足腰が衰えた人を介助して、トイレに連れていくというのは体力がいります。
トイレの近くなった高齢者を夜間に度々介助するのは、睡眠不足にもつながるでしょう。
また、認知症の人には、徘徊や妄想などの症状がみられることがあります。
いつ家を出ていって迷子になるか分からない、暴言を吐かれるなどの症状は、家族の心をすり減らしてもおかしくありません。
このようなストレスが、うつの症状に繋がることがあるのです。
人は誰でも、長く続くストレスには耐えられないので、介護者にはうつになる人も珍しくありません。
共倒れしてしまう
介護ストレスによる問題としては、「共倒れ」も挙げられます。
介護者自身が身体を壊してしまい、高齢者の面倒を見る人がいなくなってしまう状態です。
例えば、介護をする相手が配偶者の場合、自分自身も高齢であることが多いでしょう。
介護で疲れ切ってしまった結果、自分自身が倒れてしまうこともあります。
若い人であっても、仕事と介護の両方を平行して行うのは大変なことです。
中でも夜間の介助があると、睡眠不足で疲れが溜まりやすくなり、病気やけがに繋がります。
特に高齢者の自立度が低い場合や、介護者の体力が乏しい場合には、この共倒れに注意が必要です。
介護者が急に倒れてしまうと、自分一人では生きていけない高齢者もいて、中には2人とも亡くなって発見されたという痛ましいケースも見られます。
介護放棄に繋がる
介護で疲れやストレスが限界になると、介護が必要な人を放置するケースも出てきます。
食事を食べさせなくなったり、入浴や排せつの介助をしなくなることもあるのです。
病院に連れていくのが大変なので、体調が悪いのに受診させず放置する例もあります。
介護者本人の体力や気力が持たず、面倒を見切れなくなってしまうのです。
このような状態になると、高齢者の健康状態はどんどん悪化してしまいます。
その結果、更に介護の必要性が高まってしまうという悪循環が生ずる危険もあるでしょう。
疲れのために介護をさぼってしまうというのは、一歩間違うと虐待にもなる可能性があります。
中には、高齢者に暴言や暴力を加えてしまったという人もいるのです。
介護ストレスを感じる原因
一人で抱え込んでしまう
家族に介護が必要になると、自分1人で全部を抱え込んでしまう人がいます。
家族の面倒は、自分が見なくてはいけないと思いこんでしまうのです。
しかし、1人で全ての面倒をみるのは大変なこと。
人を頼らずに全てを抱え込むため、自分の生活がおろそかになり、時には仕事を辞めてしまう人もいます。
自分の健康や余暇・キャリアなどに配慮せず介護を1人でやっていると、心に余裕がなくなるものです。
1人で抱え込むことは、介護のストレスを悪化させる原因になってしまいます。
相談が出来ない
介護で生じた様々な問題や大変さを誰にも相談できないと、ストレスはたまりやすくなります。
人は、誰かに話を聞いてもらうだけでも心が軽くなるものですが、それができないと精神的に参ってしまうかもしれません。
家族が介護を必要とする状態になったことを恥ずかしいと思ったり、他人に弱音を吐くことに抵抗のある人もいますね。
誰かに相談するのをためらっていると、1人で辛い思いを抱えることになり、ストレスも溜まることになります。
また、適切な人に相談をすれば問題解決の方法が見つかるかもしれないのに、それができないとトラブルは増える一方となるでしょう。
自分の時間がなくなる
介護をしていると、多くの時間が必要となります。
その分、気分転換をする時間が無くなり、ストレスを溜めることになりがちです。
自宅での介護では、トイレや食事の世話で付き切りになることがあります。
認知症の場合は、徘徊を避けるため、一日中そばにいる必要がある人もいるのです。
このような場合、自分の趣味に取り組む時間や、気晴らしに出かける時間がなくなってしまいます。
自分の時間が持てないということは、大きなストレスになる危険があるのです。
介護ストレスの解消法
介護保険サービスを利用する
ストレスを感じて大変と思ったら、まずは介護サービスの利用を考えましょう。
つまり介護のプロに手伝ってもらうのです。
介護のプロを雇うには、大きな費用がかかると思われがちですが、日本では40歳以上の人は誰でも介護保険に加入しています。
本人の状況や収入にもよりますが、1~3割の自己負担でサービスが受けられるのです。
まずは、本人が住んでいる自治体の高齢者支援課で要介護認定を受けるための申請をしましょう。
その後、調査が行われ、本人の心身の状況に応じて受けられるサービスが決まります。
すでに介護保険を利用している人も、担当のケアマネージャー等に相談をして、サービスを増やしてもらえないか検討しましょう。
例えば、デイサービスやショートステイを利用し、一時的に介護から離れることでリフレッシュできることもあります。
施設の入居を検討する
自分1人では十分な介護は続けられないと感じたら、施設への入居を考えるのも一つの方法です。
特別養護老人ホームや有料老人ホーム、認知症の人のためのグループホームなど様々なタイプの施設があります。
施設への入居には、家族を人任せにしてしまっていいのかという抵抗感を持つ人もいますね。
しかし、施設に入居すればプロのスタッフが介護をしてくれるので、本人にとっても快適な生活に繋がる可能性があります。
もちろん本人が抵抗を感じる場合もあるので、最初はショートステイから体験してみるなど、工夫しましょう。
本人と少し距離を置くことで、精神的に余裕ができ、家族関係が良好になることも期待できます。
相談先や協力してくれる人を作る
介護をしている中で生じた問題を、自分だけで抱えるのは辛く、解決策も見つからないかもしれません。
ストレスを抱え込まないためには、相談先や援助してくれる人を探すことも必要です。
近所にある高齢者支援センター(地域包括支援センター)を探し、困ったことを相談してみましょう。
介護の専門家やソーシャルワーカーが話を聞いてくれ、一緒に解決策を考えてくれるはずです。
また場合によっては、ご近所の人にも隠さず状況を伝えておきましょう。
認知症で徘徊のある人が歩いていたら、近所の人が声をかけてくれる等の援助が期待できます。
親の介護で困ったことは、他の家族にも共有して援助を求めましょう。
遠方に住んでいるきょうだいでも、時々は来て手伝ってもらったり、状況を見てもらうことが大切です。
その他、認知症カフェのように介護する人や認知症の当事者が交流できる場を利用し、悩みを聞いてもらう方法もあります。
介護の知識を身につける
介護についての知識を身に着けておくことも、ストレスを溜めないためには必要といえます。
高齢者に対する知識不足や、間違った身体介護が疲れやストレスに繋がっていることがあるからです。
認知症の人の物の見方や、妄想の意味について学んでおけば、イライラすることも少なくなります。
上手な相手の仕方や、問題行動を予防する方法を学んでおくとよいでしょう。
また身体の不自由な人を車いすに移動させる時などは、自分の身体に負担をかけすぎず、楽にできる方法があります。
楽な介助の方法について学ぶと、疲れが減るかもしれません。
介護で使える便利なグッズや介護保険で使えるサービス・市町村で提供している高齢者支援のサービスなども知っておくと、介護が楽になる可能性があります。
最近では、介護のコツを紹介する本も出版されており、高齢者支援センターでは、介護に関わる知識を身に着けるため家族教室を開いているところもあります。
介護のストレス解消法を探すには「一歩外に出る」ことも大切
従来、高齢者の介護は家族だけで担うものでした。
しかし、それでは様々なストレスが溜まり、介護する側もされる側も辛くなる可能性があります。
高齢になれば、介護が必要になるのは当然のことで恥ずかしいと思う必要はありません。
今は介護保険や高齢者支援センターなど、高齢者と介護者を支える様々なシステムがあります。
苦しいと思ったら自分たちだけで抱え込まず、一歩外に出て悩みを解消する方法を探しましょう。