生活と医療を支える介護医療院とは?サービスや施設を解説します!

公開日: 2022年11月16日

更新日: 2022年11月18日

  • 介護・高齢者施設

高齢者が入居する介護施設の中に、介護医療院というものがあります。
これは、どのような特徴を持った施設なのでしょうか。

まず、介護医療院が設置された背景やここでどのようなサービスが受けられるのか解説します。
入居できる条件や費用も気になるところですね。

また、介護医療院のメリットやデメリットについても、確認していきましょう。

介護医療院とは

介護医療院は2017年の介護保険法改正に伴い、新しく設置された介護保険施設のことです。
介護だけでなく、特に長期の療養が必要な人が生活できるところです。

医療的なケアも受けながら、出来る限り自立した生活を送ることを目指します。
ここでは、施設内あるいは併設されている病院で医療的措置を受けられ、終末期の看取りにも対応できるのです。

その一方で、リハビリやレクリエーションをすることも出来るようになっており、病院とは異なる「生活の場」ともいえます。
また、従来の療養病床よりもプライバシーの尊重を重視しており、パーティションの設置等がある点も大きな特徴です。

その他、地域交流や地域貢献が求められ、交流行事の実施や近隣のボランティアを受け入れることなどが期待されています。

介護医療院の設立の背景

従来は、介護保険を使った施設として、「介護老人福祉施設」「介護老人保健施設」「介護療養型医療施設」の3つがありました。
このうち介護療養型医療施設は2024年に廃止されることになり、同時に2018年から「介護医療院」の設置が決定されたのです。

近年、介護を必要とする高齢者の中でも医療措置の必要な人が増えてきており、それに対応することが求められるようになりました。
特に、経管栄養や痰の吸引など、生活の中で継続して行うべき医療行為を提供する介護施設を増やす必要が出てきたのです。

また、従来の介護施設で生活する人の中には、容態が急変する例もあり、また看取りが必要となる場合もあります。
これらに対応し、またプライバシーを尊重しつつ自立した生活ができる施設を目指すという理念のもとで、介護医療院の設置が始まりました。

介護医療院の施設

設置基準

介護医療院の建物には、一定の基準があります。
療養室の面積は、一人当たり8.0㎡以上で、定員は一室当たり4人までです。

プライバシーの保護に留意し、ベッド間のパーティションや、身の回りのものを保管する場所を設けることも必須の条件となっています。
ベッドにはナースコールも設置されていますよ。

共用部分としては、40㎡以上の機能訓練室やレクリエーションルーム、談話室等の設備があります。
また、浴室や洗面所なども体の不自由な人が利用しやすいバリアフリーとするよう定められているのです。

その上で、診察室や処置室なども設けることになっています。
ただし、病院と併設になっている場合は、隣にある病院の建物で診察等を受けることになるでしょう。

人員基準

介護医療院に勤務しているスタッフの人員も、法律で定められています。
介護医療院は、大きく分けてⅠ型とⅡ型の2つがあり、それぞれ配置の基準が異なるのです。

Ⅰ型は「介護療養病床」特に「療養機能強化型」に相当する人、すなわち病状が比較的重い人を受け入れるタイプ。
Ⅱ型はそれよりも容体が軽く、安定している「老人保健施設相当」の人が対象です。

当然のことながら、Ⅰ型の方が医師や薬剤師の配置が多くなります。
利用者48人に対し1人以上(施設内で3人以上)の医師、利用者150人に対し1人の薬剤師がいなくてはなりません。

一方Ⅱ型の場合は、100人に1人の医師、300人に1人の薬剤師がいればよいことになっています。
その他リハビリ専門職、看護職員、介護職員、栄養士、ケアマネジャーなどの配置が義務付けられているのです。

介護医療院のサービス

医療サービス

ここでは、通常の老人ホームではできないような医療的な処置が可能です。
病院に入院するような急性期は脱しているけれど、自宅や施設に戻るのは不安という人でも対応して貰えるので安心ですね。

例えば、経管栄養や痰の吸引、胸水を抜く処置などは、医療行為なので介護職員では対応できません。
しかし、介護医療院には医師や看護師がいるので、このような処置が日常的に必要な人でも生活できるのです。

投薬や検査なども、施設内か併設の病院で行えます。
基本的に自分で通院したり、家族に連れて行ってもらう必要はありません。

また、症状が悪化した場合は提携または併設されている病院があるので、スムーズに入院できます。
更に、終末期におけるターミナルケアや看取りもこの施設内で可能です。

病院ではないけれど医療を受けながら、老後の生活を安定して続けられるのがこの施設の特徴といえるでしょう。

介護サービス

介護医療院は、介護施設の一つであり、身体介護のサービスも充実しています。
食事やトイレの介助、おむつを替える、入浴といったことに関して、介護スタッフがお世話をしてくれるのです。

このような介護を通じて健康管理が行われるだけでなく、リハビリテーションなどのサービスもあります。
高齢者の心身機能の維持や回復を図り、それによって可能な限り自立した生活が送れるように支援が行われるのです。

そのため、家族の付き添い等は必要ありません。
施設のスタッフに任せて、安心して生活をすることができます。

このようなサービスは、介護老人保健施設(老健)に似ていると感じるかもしれません。
しかし、老健が基本的に6か月という期限付きで自宅に帰ることを目標としているのに対し、介護医療院では亡くなるまで暮らすことができるという点が大きな違いです。

生活サポートサービス

通常の老人ホームと同じく、居室内の掃除や洗濯など日常生活の支援も行われています。
それによって自立した生活ができるので、家族が世話をしたり他の介護サービスと契約する必要はありません。

また、介護医療院ではプライバシーの確保を重視したサービスが特徴。
個人の生活の場であるということを考慮し、個室やパーテーションのある居室を利用して支援が行われます。

その上で、施設内でのレクリエーションや地域交流も行うというのが大きな特徴です。
季節の行事や地域のボランティアによる交流があるので、病院とは異なる楽しさがあるかもしれません。

このような取り組みを通じて、医療を受けつつも日常的な生活を楽しむことができるでしょう。

介護医療院の入居条件

入居できるのは原則として、65歳以上で、要介護1〜5の認定を受けた人です。
従って、より介護度の低い要支援1・2の人は対象となりません。

また、64歳以下でも40歳以上で特定の疾病がある人は対象となる場合があります。
例えば、関節リウマチや末期ガンなどで介護が必要な人は入居できる可能性があるのです。

いずれにしても、介護医療院への入居を希望する場合は、介護認定を受けケアマネジャーに相談をしたうえで調整を図ります。
他の施設とサービス内容などを比較して、その中で介護医療院がベストということになれば話を進めることになるでしょう。

なお、契約の際は、かかりつけ医や担当医からの紹介状、あるいは「診療情報提供書」「健康診断書」を求められる場合もあります。

介護医療院の費用

介護医療院で必要となる費用の内訳は、施設サービス費、居住費、食費、日常生活費となります。
施設サービス費はⅠ型とⅡ型で費用が異なり、要介護度によっても差が設けられているのです。

例えば、Ⅰ型では要介護1の人で1か月約24,000円、要介護5の人では1か月約40,000円となります。
一方、Ⅱ型の場合は、要介護1で約23,000円、要介護5の人では約36,000円です。

居住費は普通の個室なら1日に1,640円、多床室なら320円、ユニット型なら1日1,640円~1,970円。
多いのは多床室と言われており、この場合は1か月に約10,000円程度となるでしょう。

日常生活費や食費も合わせると、全部で月額10~20万円程度となります。
食費については、所得等によって軽減措置も設けられていますよ。

介護医療院のメリット・デメリット

メリット

介護医療院の特徴は、日常生活を送りながら充実した医療も受けられるということ。
医師や看護師がきちんと配置されており、医療施設も整っているので、病気のある人でもしっかりしたケアを受けられます。

もちろん、急に体調が悪くなった時や、看取りが必要になった時でも、その場で対応してもらえるので安心です。
その一方で、普段はレクリエーションやアクティビティが行われ、他の入居者との交流もできます。

医療的な安心感と日常生活の充実の両方を兼ね備えているのが、大きなメリットといえるでしょう。

デメリット

介護医療院の場合、充実したサービスがある分、他の介護施設よりも費用が高くなる可能性があります。
この点は、特に経済的な不安のある人にとって大きなデメリットといえるでしょう。

また、一応プライバシーの保護を重視することになっていますが、多くの場合は多床室であり集団生活となります。
1人で静かに過ごしたい人にとっては、プライバシーが守られないと感じる人もいるかもしれません。

また、施設内においては、他の入居者とのトラブルが起きる可能性もないとはいえないことに注意が必要です。

介護医療院は医療と生活の両立ができる

高齢になり身体的な不調が出てきたとき、日常的に医療措置を受けながら生活をしなくてはならない場合があります。
この時、病院に入院するのではなく、医療と介護を受けながら生活できるのが介護医療院です。

医療も生活も両立させるという目標があるので、施設面でもスタッフの面でも充実した場所となっています。
やや割高なのが難点ですが、要介護1以上で医療的な措置が日々必要な人の場合は、検討したい施設といえるでしょう。

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