熟年離婚に踏み切る前に!年金・慰謝料・後悔しないための準備
公開日: 2021年04月26日
更新日: 2022年09月07日
- くらし全般
最近増えているといわれる熟年離婚。 人生のターニングポイントともいえる熟年世代で、このような大きな決断をすることに、迷う人もいるかもしれません。 熟年離婚を考えるなら、確認しておきたいことはたくさんあります。 まずは、熟年離婚に至る原因やその利点、問題点について知っておきましょう。 また、もし離婚をするならどのような準備や手続きが必要か、という点も解説していきます。
熟年離婚とは?
熟年とは、60歳から80歳くらいの年齢を指します。 熟年離婚とは、このような年代に差し掛かった夫婦が離婚をすることです。 長年連れ添ってきたにもかかわらず、老後を共にせず離婚するということ。 これは従来の価値観からは考えられないものでした。 しかし近年では、様々な理由から、50代以降で離婚を選択する人が増えているのです。
厚生労働省がまとめた統計(令和元年人口動態統計月報年計の概況)によると、日本全体の離婚件数は減少傾向にあります。 しかし、同居期間20年以上の夫婦では離婚件数が増加しつつあるのです。 特に2000年代に入ってから、50歳以上の離婚件数が急増したことが話題となりました。 中でも夫の定年や子供の独立を機に、妻から離婚を切り出すというケースが注目されています。 もちろん、夫の側から離婚を切り出すケースもあります。 老後の人生を考え始める熟年世代は、結婚生活を見直す時期でもあるのでしょう。
熟年離婚の原因とは?
平均寿命の長期化
熟年離婚が増えた原因の一つは、平均寿命が延びたことです。 厚生労働省の統計によると、令和元年では男性で81.41歳、女性で87.45歳が平均寿命となっています。 平成2年と比べると、この30年の間で5歳以上も寿命が延びているのです。 定年後、25~30年以上も余生があるということになりますね。 以前のように余生が短ければ、夫婦2人で過ごす期間も短く、離婚などせずに我慢することもできたかもしれません。 しかし、老後が長くなった現在、我慢せず自由に過ごしたいと思う人も増えたのではないでしょうか。
年金分割制度の整備
年金分割制度とは、離婚した後、婚姻期間中の厚生年金(共済年金)の実績を夫婦で分割する制度です。 この制度は、2007年4月以降に離婚した人から使えるようになりました。 それまでは、離婚した場合、専業主婦は年金額が大きく減ってしまい生活に困ることがありました。 その不公平さを解消するため、厚生年金や共済年金に加入している場合、その実績を分け合えるようにしたのです。 この制度により金銭的な安定が得られることから、熟年離婚率増加がさらに進んだと言われています。
介護問題
平均寿命が延びたことで、介護の問題も深刻になっており、それが熟年離婚の原因となることがあります。 従来、夫や夫の親の介護を担うのは、妻の役目とされてきました。 しかし、夫との関係が壊れてしまった時、その介護を担うのは辛いもの。 そうなる前に別れてしまいたい、という妻の思いが、熟年離婚につながるのです。 また、夫が自分の親の介護を妻に任せきりにしてしまう、ということも問題となります。 夫の親との関係が良好とは限らず、耐えかねた妻が離婚を申し出るというケースもあるのです。
ストレス
熟年離婚する夫婦の場合、一緒に生活することがストレスになる、という例が見られます。 定年後は毎日2人だけで過ごす時間が長くなり、人によっては衝突する機会も増えてしまうのです。 また、夫が、定年後妻の行く所にどこでもついていくようになり「ぬれ落ち葉」などと揶揄されたことがありました。 妻はそれまで自由に友達と遊びに行ったりしていたのに、夫の昼食の心配をしなくてはいけなかったり、行動を干渉されたりするようになってストレスを感じます。 多少気が合わなかった夫婦でも、それまでは仕事に行っている間、顔を合わせなくてよかったので何とかなっていたのです。 しかし、定年後はいつも一緒にいることがストレスとなり、ついには離婚したいという思いにいたるケースがあります。
不倫・浮気
熟年に限らず離婚の大きな原因となるのは、不倫や浮気です。 相手が、自分以外の人に心を移している、と感じたら、別れたくなるのは当然でしょう。 まして、これから老後の長い時間を共にしなくてはならない相手が浮気をしているようでは、離婚したくなるのは仕方がないかもしれません。
DV・モラハラ
配偶者に暴力をふるったり暴言を吐く、というのは、DV(ドメスティックバイオレンス)と言われます。 また、きつい言葉で叱責したり、行動を制限したりするのはモラルハラスメントといい、DVと共に離婚の原因になるのです。 一昔前なら、夫が妻を殴ったり、きつい言葉をかけるのはよくあることでした。 しかし、最近では、そのようなことを妻が我慢しないのは当然のことです。 また、最近では妻の側が夫にDVをするというケースも見られます。
子どもの自立
離婚を思いとどまる大きな理由となるのは、子供の存在です。 子供の気持ちや養育のことを考えると、辛くても離婚できないという人はいるでしょう。 しかし、50~60代になると子供が自立し、離婚しても心配がなくなります。 子供が社会人になったり、結婚したことをきっかけに離婚をするという人もいるのです。
熟年離婚のメリット
結婚生活に伴うストレスがなくなる
熟年離婚の一番のメリットは、結婚生活に伴うストレスから解放される、という点です。 性格が合わず、けんかばかりしていたり、会話がなかったり、という辛さがなくなります。 長い老後の間、毎日嫌な相手と顔を合わせて生活しなくてもよい、というのがメリットといえるでしょう。 また、配偶者に行動を干渉されたりせず、自由に自分のやりたいことができるのです。
配偶者の親族と縁が切れる
また、配偶者と気が合わないだけでなく、その親族との関係がうまくいっていない場合、縁が切れるというメリットもあります。 仲の良くない義父母やきょうだいとお付き合いをしたり、介護など面倒をみるのは大変ですが、それを離婚によって免れることができるのです。
子供のことを心配する必要がない
若い時に離婚すると、「子供の養育費をどうするのか」という問題や「親権をどちらが持つのか」といった問題が起こります。 しかし、すでに子供が独立しているようなら、そんな心配はないというのが熟年での離婚のメリットと言えるでしょう。
熟年離婚のデメリット
孤独になる危険
離婚した後は、一人で気軽な生活ができる反面、強い孤独を感じる危険もあります。 子供が独立していると、一人暮らしをすることになるのです。 特に退職後は、一人で過ごす時間が長くなりがちです。 同世代の友人の多くは家族と共に暮らしていて、一緒に過ごす時間を持ってくれる人は少ないかもしれません。
経済的な問題
離婚すると、経済的に苦しくなることがあります。 離婚した相手から財産分与を受けるとしても、老後の生活に十分なものをもらえるとは限りません。 相手に資産がなかったり、財産分与を拒否して揉めたりすることも考えられます。
家事と介護の問題
特に男性の場合、家事が苦手なこともあるかもしれません。 これまで妻に家事全般を頼ってきたようなら、思いもかけない負担を覚悟する必要があります。 また、自分自身が介護が必要になった時、面倒をみてくれる人はいなくなります。 子供に負担をかけるか、介護サービスにすべてを頼るしかなく、経済的にも苦しくなるかもしれません。
熟年離婚する前に準備しておくこと
資金を確認する
熟年離婚をしたいと思ったら、まずは手持ちの資金を確認しましょう。 自分名義の預金や、株などの価格を調べて、どのくらい持っているのか確かめておきます。 その上で、財産分与を行った後、どのくらいの資金が残り、年金がいくらもらえるのかざっと計算してみることが必要です。 離婚後にきちんと生活していけるか確認してから、手続きを進めましょう。
財産分与について確認する
離婚を検討するときには、財産分与について確認しておきましょう。 財産分与とは、夫婦で築いた財産を分け合うことです。 例えば、家や土地なども、結婚後に購入し2人で維持してきたとしたら、半分ずつ分ける必要があります。 貯金・車・退職金も、少なくとも結婚した後取得した分は配偶者にも権利が認められるのです。 財産分与の請求ができるのは離婚後2年までの間。 できれば、離婚前にきちんと話し合って財産分与を行いましょう。 話し合いがうまくいかないようなら、弁護士に間に入ってもらったり家庭裁判所に調停を申し立てる方法もあります。
年金分割について確認する
夫婦の両方、あるいは一方が厚生年金(共済年金)に加入していた場合、年金分割の請求を行うことで、年金保険料の納付実績を分け合うことができます。 特に専業主婦の妻で、夫の扶養家族として国民年金の3号被保険者となっている場合は、年金分割を行わないと老齢年金の額が少なくなるのです。 この場合は、妻が年金事務所に年金分割の請求をすれば、夫が納付した厚生年金の実績の半分を妻のものにできます。 一方、夫婦の両方が厚生年金(共済年金)に加入していた場合は、双方の合意のもとで納付実績を分割しますが、場合によっては自分の分が減ってしまうことも。 年金分割をした方が得なのかどうか確認をし、必要なら手続きを進めましょう。
慰謝料を請求するかどうか決める
相手に不満があって離婚する場合、慰謝料を請求できると思うかもしれません。 しかし、慰謝料請求ができるケースは限られています。 例えば、相手に不倫やひどいDVがあり、それが原因で離婚する場合などは慰謝料請求できる可能性があります。 しかし、単に性格があわないという程度では慰謝料請求はできません。 慰謝料請求ができるかどうか迷う時は、弁護士に相談して決めましょう。
今後の住居を検討する
離婚した後の住居を決めておくことは重要なポイント。 賃貸住宅の場合、一人暮らしの高齢者の入居を嫌がる場合もあり、早めに住居を押さえておきたいものです。 複数の保証人を立てたり、保証会社にお金を払うなど思わぬ手続きが必要となる場合もあるので、早めに準備を進めましょう。 また、自分の子供や信頼できる友人の近くだと安心できるかもしれません。 老後のことを考え、生活に便利な場所を選ぶことも大切です。
仕事を探す
離婚した後は、できれば仕事を持っておきたいものです。 経済的にも安定しますし、毎日出かける場所があるというのは生活にも張りが出ます。 年齢的なことを考えると、高給は期待できないかもしれません。 しかし、人と接する機会がないと孤独に陥りやすくなります。 離婚する前に仕事を探しておくと、これからの生活に明るさが見えてくるかもしれません。
友人との交流を深める
熟年離婚した人には、心を許せる友人が必要です。 一人で寂しく過ごしていると、精神的に追い詰められたり、生活が荒れたりしがち。 できれば、同じような立場の友人がいると、今の苦労を分かり合えてよいかもしれません。 家庭生活が上手く行っている人には、わからないこともあるからです。 互いに助け合える関係の友達を大切にして、交流を深めておきましょう。
熟年離婚の流れ・手続き
協議離婚
離婚の手続きは、双方が協議をして離婚届に記入し、市町村の役場に届ければ成立します。 これが協議離婚で、日本で離婚する人の90%以上がこの形です。 本籍地の役所か、居住地の役所に届け出ますが、本籍地以外なら戸籍謄本を添えて提出する必要があります。 熟年離婚の場合、子供が成人していることが多いのですが、未成年の子供がいるようなら親権をどちらにするか決めて同時に届け出ることが必要です。 なお、財産分与や年金分割などの合意ができていないようなら、あわてて離婚届を出してしまわず、弁護士や家庭裁判所に相談してからにしましょう。
調停離婚
相手が離婚を承諾しなかったり、財産分与などの条件でもめているときは家庭裁判所に調停を申し立てましょう。 家庭裁判所では、調停委員や裁判官が間に入り、双方の言い分を聞いて調停を行ってくれます。 なかなか話し合いに乗ってくれない相手であっても、裁判所からの呼び出しがあれば協議に応じてくれるかもしれません。 また、暴力をふるうような相手でも、別々に話を聞いてくれるので顔を合わせる必要がなく安心です。 調停で離婚することやその条件が決まると、調停調書という文書が作成されます。 調停調書に書かれたことは、訴訟と同じ効果を持つので、財産分与を行った時など必要があれば差し押さえも可能です。
裁判(訴訟)
家庭裁判所での調停が上手く行かず、相手が離婚を承諾しないような場合はどうしたらよいのでしょうか。 この場合は、家庭裁判所で訴訟を起こすことになります。 調停では話し合いで結論が決まりますが、裁判の場合裁判官が客観的な証拠をもとに判決を出すことになるのです。 したがって、相手が裁判所に来なかったとしても成立します。 ただし、訴訟での離婚は離婚事由がはっきりと決められており、不貞行為などがないと認められないことが多いのです。 訴訟に持ち込む場合は、離婚できる可能性があるかどうか弁護士に相談しておくことをおすすめします。 なお、離婚訴訟は必ず調停を行った後、それが不成立になった時にしか行えません。 まずは自分で話し合いをし、それでもだめなら調停、それが不成立になったら訴訟という流れになります。
熟年離婚をするなら準備はしっかりと
熟年世代は人生の曲がり角。 ここで「悔いのない余生を選びたい」と思うのは当然です。 しかし、熟年離婚にはいくつかのデメリットや乗り越えなくてはならないハードルがあります。 一つ間違えると、想像したのとは違う生活が待っているかもしれません。 熟年になっての離婚には、特に大きなエネルギーが必要です。 焦らずに十分な準備をし、時には専門家の力も借りて考えていきましょう。
おひとりさまの生活に不安を感じている方へ
熟年離婚を考えている方の中には、おひとりさまになることへの不安を抱える方もいらっしゃることでしょう。 離婚した後の高齢者用施設の入居手続きはもちろん、ご自身が亡くなった後の葬儀等はどうすればいいのでしょうか。 これらの手続きは、お近くにお住いのお子様やご親戚の方に頼むのが一般的です。 しかし、最近ではお子様がいないご家庭も増えていますし、ご親戚の方が遠方に住んでいることから連絡が疎遠になり、関係性が希薄になってしまっている方も多くいらっしゃいます。 身のまわりに頼れるご家族がいないという方は、身元保証をしてくれる会社や団体を頼りにしてみるのはいかがでしょうか。 「身元保証相談士協会」は、おひとりさまの方に対して希望の供養方法や遺言を執り行うなど、いわば「家族代行」をしてくれる心強い存在です。 必要があれば、入院の手続きや生活用品の購入代行、緊急時の駆け付けまで行ってくれます。 無料で専門家に相談もできますので、ぜひ一度活用してみてはいかがでしょうか。 全国93拠点の会員が
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