医療や物資とともに届けるのは“安心”国内外の人道危機とこれからも向き合い続ける
公開日: 2024年10月23日
更新日: 2024年10月23日
- くらし全般
世界191の国と地域に根差し、深刻化する人道危機に向き合い様々な支援を行う赤十字社。世界で19番目の赤十字社となる「日本赤十字社」(日赤)もまた、国内外の災害、紛争、貧困や感染症などに対する活動を続けています。
今回は、パートナーシップ推進部の太田さん、山本さん、松日樂さんにお話を伺いました。
これまでの活動の歴史の中で、特に契機となるようなものとしては、どのような出来事が挙げられますか?
3年後の2027年に、日赤は創立150周年を迎えます。その歴史において、様々な取り組みがなされてきましたが、先駆的な取り組みという点では、自然災害への救護活動が挙げられると思います。赤十字の起源は戦時救護であり、当初、自然災害などへの救援活動は赤十字の活動ではありませんでした。
しかし、日本赤十字社は1888年に福島県の磐梯山で発生した噴火災害で怪我をされた方々の救護のため医療班を派遣。このことは、世界の赤十字において先駆的な活動であり、その後の日本赤十字社の方向性を定めたものといえるかもしれません。
ちなみに、磐梯山噴火への救護活動においては、日赤の黎明期をお支え下さった昭憲皇太后の思し召しがあったと言われております。そして、その昭憲皇太后さまが1912年の赤十字国際会議に際し、各国赤十字社の平時事業にと、ご寄付された10万円(現在の3億5千万円相当)を基に昭憲皇太后基金(The Empress Shôken Fund)が創設されました。
当時、戦時救護を主に行っていた赤十字において、自然災害や疾病予防等の平時活動を奨励するための基金設立は画期的なことであり、世界の国際開発援助の先駆けとなりました。
現在では、100年以上継続している平時における人道活動を対象とした世界最古の国際人道基金として世界で広く知られています。
また、あまり知られておりませんが、日本赤十字社は、国際赤十字・赤新月社連盟(IFRC)の創設にも深くかかわっています。
第一次世界大戦終了後の1918年11月に、日赤の外事顧問であった蜷川新が米、英、ICRCに平時活動の必要性を訴える書簡を送付。翌1918年2月に、その考えに賛同した五か国(日・米・英・仏・伊)の赤十字社が、アメリカ赤十字社の呼びかけに賛同する形で代表者会議(カンヌ会議)が開催され、その後の協議を経て、5月に赤十字社連盟が創立されました。
蜷川は連盟理事に就任。日赤は赤十字連盟の創設5社の一つとして、近衞社長(現日赤名誉社長)がアジア人として初の連盟会長に就任するなど中心的な役割を担ってきました。
また、災害対応を契機とした活動という視点では、阪神・淡路大震災をきっかけに、こころのケア活動の重要性が認識されたほか、東日本大震災では日頃からの自助、共助の大切さを学び、現在の防災セミナーなどの活動につなげてきました。東日本大震災では、防災の必要性に加え、地震と原子力の複合災害への対応という経験により、平時からの原子力災害への備えを強化してきました。
さらに近年では、新型コロナウイルスへの対応を契機に、新型感染症への対応マニュアルを見直すなど、厳しい経験からの学びを次の活動につなげてまいりました。
特に力を入れている活動について教えてください。
時代のニーズに合わせて、赤十字の活動は変化してきました。今までに経験したことがない少子高齢社会の到来。そして気候変動などの影響により激甚化を続ける水害、また、大地震など自然災害発生の高まり。さらに海外でも国際情勢の変化による武力衝突の激化など、現在、そして近い将来に予測される人道危機は悪化の一途をたどっています。
これからも、このような様々な人道課題に対し、定期的に金銭的なご支援をいただく会員の皆様をはじめとした多くの方々からのサポートを支えとし、赤十字ボランティアの皆様方とともに、その解決に向けて更なる取り組みを進めていきたいと考えております。
寄付の具体的な使途を教えてください。
国内外のあらゆる人道支援に使用させていただきます。日本赤十字社には国内災害救護、医療事業、国際活動、血液事業、青少年赤十字、社会福祉事業、救急法などの講習、赤十字ボランティア、看護師などの養成の9つの事業があります。「この事業に使ってほしい」というご相談も承っておりますが、記載方法などで注意いただきたい点がございますので、遺贈の遺言を書かれる前に必ずご連絡をいただきますようお願いいたします。
また、私たち日本赤十字社にはすべての都道府県に支部があり、それぞれ地域に根差した活動をしていますので、「地元を応援したい」「特定の地域に寄付したい」という場合には、日本赤十字社全体ではなく、都道府県の支部に寄付するという選択肢もあります。
活動のなかで、「赤十字マークを見ると安心する」というお声をいただくことが多くありますので、医療や物資のみならず、安心をお届けすることも我々の仕事だと思っています。
令和6年能登半島地震 被災地からの声
日本赤十字社からの支援を受けた方々から、多くの声が寄せられています。
許可をいただき、その一部をご紹介いたします。
寺田静江さん(82歳・七尾市)
地震が起きたのは、お正月のおせちを食べ終えて、居間でくつろいでいたとき。立っていられない大きな揺れにびっくりしました。避難所ではトイレに流す水がないのでみんなで水くみに行きます。在宅避難している人も手伝ってくれて、みんな大変な中なのに人のやさしさが身に染みるというか、心温まります。うちの避難所はみんな清潔に保っているから、きれいですよ。地域のつながりで頑張れています。日赤のお医者さんが避難所にきて診てくれたのは、心強く感じました。こうやって話を聞いてくれるのもうれしいんです!野木清さん(63歳・輪島市)
避難所では食生活も糖質ばかりで偏るし、ストレスもある。それでも赤十字の外科の先生に処置してもらえたのは幸運でありがたかった。輪島朝市の火災で自宅も何もかもなくして落ち込んでいたけれど、もう一度ゼロから頑張るしかない、頑張ってみようと思えそうです輪島市のご夫妻
11月に退院し、通院が必要なのに交通が遮断され、病院に行かれん状態です。不安な状態にあるもんで、診てもらえて、話もできて……。何も持ってこられなかったので、日赤さんから毛布をいただけて、すごくうれしいです。避難所のみなさん、喜んでいると思いますよ、みなさん下に(日赤の毛布)を敷いてらっしゃるでしょう。これ、一番最初にいただいて助かっています
遺贈寄付はどのような流れで受け付けてもらえますか?
お電話またはお問い合わせフォームにて、お気軽にご連絡いただけたらと思います。
まずは遺贈内容を決めていただくところから始まりますが、不動産や有価証券はそのまま受け取ることが難しく、遺言執行者の方による換価換金の必要がありますのでご注意いただきますようお願いいたします。
遺贈・相続財産寄付のご案内パンフレットをご用意しておりますが、書面で見るだけではなかなか分かりづらいことあるかと思いますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。
活動するうえで、大切にしていることを教えてください。
苦しんでいる人を救うこと、つまり人道を実践するためには公平でなければなりません。 勘違いされることも多いのですが、赤十字は戦争に反対する団体ではありません。敵味方なく苦しんでいる人を救うために、戦争にもルール(国際人道法)があることを訴えており、常に公平であることを大切にしています。
常に公平に紛争当事者双方を救うためには、どちらの敵にも味方にもなってはなりません。常に中立な立場を保てなければ、苦しんでいる人にアクセスすることすらできないからです。
また、日赤が核兵器や対人地雷などの無差別殺傷兵器に反対を表明しているのは、それら兵器は敵味方どころか、兵士も民間人も見境なく犠牲になる可能性があるからです。日赤は、世界唯一の被爆国の赤十字社として、国際赤十字とともに常に警鐘を鳴らしています。
最後に読者へのメッセージをお願いします。
日本赤十字社の使命は「苦しんでいる人を救いたいという思いを結集し、いかなる状況下でも、人間のいのちと健康、尊厳を守る」ことにあります。災害や病気、紛争といった困難は、誰でも、突然遭遇してしまう可能性のあることで、自分の力だけでコントロールできるものではありません。そのような困難に直面したときに、当事者以外は無関心に陥るような社会ではなく、助け合い、支え合いが生まれる社会にしたいという思いで、私たちは日々活動しています。
また、ご遺贈に関するご相談をお受けするなかでは、ご相談者の皆様に悔いのない決断をしていただくということを大切にしています。「まだ何も分からない」「他の団体と迷っている」というご相談も大歓迎です。ご自身で築かれた財産を託すというのは、非常に重要な決断だと思います。ご相談者様が悔いなく決断できるサポートをしてまいりますので、ぜひお気軽にご相談ください。
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