介護における自立を目指す自立支援介護?メリットや内容について!
公開日: 2023年04月12日
更新日: 2023年04月13日
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自立支援介護とは
近年、介護サービスの中で「自立支援」という取り組みが広く行われるようになりました。
要介護者に対する支援の目標が、自立であるという点に特徴があります。
一般に介護といえば、高齢者の「お世話」というイメージがあるかもしれません。
しかし、2018年の介護報酬改定以降、介護の方向性が自立を支援するという方針に変わっていきました。
高齢者自身の能力を高め利用することで、要介護になる人を減らそうというのです。
これにより介護を受ける人の生活の質の向上や、国の財政負担を減らすことも期待できます。
また、身の回りのことが自分で出来るようになれば家族の負担が減るかもしれません。
自立支援は、介護サービスを仕事とする人だけでなく家庭内での介護でも意識したい点といえるでしょう。
3つの自立とは
介護における自立とは、高齢者など介護が必要な人が可能な限り自分の力で生活できるようになるという意味です。
その具体的な内容は、以下の3つに分類することができます。
身体的自立
生活の中で必要となる様々な動作を、できるだけ人の手を借りずに行えるということです。
例としては、食事や排泄、入浴などがあげられます。
歩いてトイレに行く、人の手を借りず手すりを使って座るなどの動作が出来るようになるのも自立の一つです。
ゆっくりとしか動けない人には、つい手を貸したくなりますが、時間がかかってもできるだけ本人の動作に任せることが身体的自立を促します。
精神的自立
自分のことは自分で決められる、責任をもって行動できるというのが精神的自立です。
例えば、生活の仕方を自分の好みや判断で決定できるということを指します。
趣味を楽しみ、好きなものや健康に合う食事を自ら選択できるのも一つの自立です。
外出や友人とのお付き合いが、きちんとできるということも含まれるでしょう。
そのためには判断力や意欲なども必要となります。
高齢者の場合、認知症の発症により精神的な自立が損なわれる危険がありますね。
それでも出来る限り、本人の意思を尊重することで精神的自立度を高めることができるはずです。
経済的自立
自分のお金で生活できるということが、経済的な自立です。
自分の収入を得て貯蓄をし、それを計画的に使って生活を維持できるということですね。
ただし、高齢者介護においては、経済的自立はあまり重視されず、主に身体的自立に重点が置かれる傾向があります。
自立支援介護に必要なケア
自立支援介護では、特に以下の4つが基本的なケアとされています。
水分ケア
人間の命を維持するには、水分をとることが必須です。
高齢者介護では、1日に1500ml以上の水分摂取が基準とされています。
高齢の方は、のどの渇きの自覚が鈍くなることがあり、知らないうちに脱水症状になることも。
介護者は、水分摂取に十分気を遣い、飲み物や食事で必要な水分がとれるよう工夫する必要があるのです。
特に「自立」を意識すると体を動かす場面が多くなるので、水分摂取には十分気を遣うことになります。
栄養ケア
自立支援介護では、食事に対するケアも重要です。
年齢や男女、体格によって差がありますが、おおむね1日に1500㎉の栄養をとる必要があるとされています。
この程度のカロリーをとっていないと、身体が動かすエネルギーが不足し健康の維持ができません。
栄養バランスも考えつつ、間食も使って十分な量をとれるように配慮するのです。
高齢になると食が細くなりがちで、それによって活動性が鈍り、筋力の衰えに繋がることもあります。
自立性を高めるためにも、十分な栄養摂取は大切です。
運動ケア
運動をして、筋力・体力を維持向上させるケアです。
筋トレなどのリハビリも行われますが、日常生活でできることを可能な限り自分で行うことも運動になります。
介護者は、危険がなければ極力手を貸さず、本人に任せるようにすることも必要です。
また、自立に向けて1日に2㎞を歩くことが目標とされています。
2㎞歩くことは、高齢者にとって大変なことかもしれません。
しかし、運動をして筋力・体力を維持すれば、自分で買い物に行くこともでき、精神的・経済的な自立の効果も期待できます。
排便ケア
排便の自立を目指すのも重要なケアの一つです。
便秘になると体調を崩しやすくなり浣腸が必要になるなど、本人も介護者も苦労することがあります。
3日以内に自然にお通じがあるのが望ましく、そのためには十分な水分の摂取や定期的なトイレの習慣ができるよう介護者が配慮するのです。
また、タイミングを見てトイレに誘うことで、おむつが必要でなくなることもあります。
排便は、本人の自尊心にもかかわるデリケートな問題であり、精神的にも重要なケアといえるでしょう。
自立支援介護のメリット
利用者のQOLの向上
自立支援介護は、日常生活の様々な動作をできるだけ自力で行うように援助するものです。
これによって自立性が高まれば、介護を受ける本人が活動に前向きになれるかもしれません。
食事や排泄、入浴などの場面で自分で出来ることが増えると、自信が持てるようになります。
家事なども可能な限り自分で行うと、体力もついて活動性が増し、外出の機会が増えることがあるかもしれません。
介護を受ける人が自信を持ち、日々を楽しんで過ごせるようになるのです。
いわゆるQOL(生活の質)の向上が期待できます。
介護の負担を軽減
介護を受ける人が、様々なことを自分で出来るようになると、介護者の負担も軽くなります。
特に身体介護については、重い身体を支える必要があり、介護者にすべてお任せでは大変な時があるのです。
例えば、トイレから立ち上がるという動作でも、本人が手すりを握り自分で身体を支えてくれると、介護者は少ない力で対処できます。
このようなことを意識して介助を行い、介護を受ける人の協力を得ると介護者の疲労はぐっと少なくなるでしょう。
介護度の改善
介護認定を受けた後、年齢を重ねるにつれ徐々に介護度が上がっていくと思われがちです。
しかし、自立支援の介護によって、介護度が下がる可能性もあります。
人間の身体は、いくつになっても自分で回復する力を持っているからです。
程度の差はありますが、自立を意識した介護によって能力が回復し、症状が改善するかもしれません。
介護度が下がらなかったとしても、それ以上悪化することを防止し、現状をキープできる可能性があります。
自立支援介護に関する注意点
ケアをバランスよく行う
自立支援の介護には、4つの基本的なケアがありますが、1つに偏らないようにすることが大切です。
特に、自立させるには体力・筋力が大切だからといって、運動ケアばかり行うのは問題があります。
体力をつけるためには食事も大切ですし、水分を十分に取らないと脱水症状になることも。
高齢者にとって体調を整えるためには、排泄も想像以上に大事です。
どれか1つのケアばかりに気を取られず、バランスよく行うことが必要といえるでしょう。
基準について正しく理解する
自立支援介護には4つの基本的なケアがあり、それぞれについて具体的な数値基準があります。
しかし、これの意味を理解せず、数値だけにとらわれると却ってトラブルが生じる可能性があるのです。
人間には個人差があり、またその場その場の状況に合わせる必要があるので、基準の意味をよく考える必要があります。
例えば、歩行は1日2kmを目指すという基準がありますが体調や季節によっては難しい場合があるかもしれません。
基準は平均的なものであることを理解し、その人の状況や場面によって判断することが大切です。
なにより、その人の様子をよく観察し、無理なくできるかどうかを目安にしなくてはなりません。
本人の意思を尊重する
介護において大切なことは、本人の意思をできるだけ尊重することです。
善意であっても、本人の嫌がることを無理強いするのは避けたいものですね。
特に自立支援の介護においては、あえて手助けをせず自分ですることを目指すことがあります。
しかし、本人の意思に反して無理強いすると抵抗されてしまうこともあるでしょう。
また、身体状況に合わないことをさせると、ケガにつながることもあります。
本人が納得した上で、身体の状況を見極めながら、少しずつ出来ることを増やすことを目指したいものです。
自立支援の介護は介護者にも本人にもメリットがある
要介護者であっても、生活のすべてにおいて介護者の手を借りる必要があるとは限りません。
可能であれば本人の能力を活かして、自立を目指すことも意識したいものです。
自立支援の介護においては、運動ケアに加えて、水分・栄養・排泄のケアもバランスよく行います。
それによって体調を整え、自立度を高めることが期待できるのです。
このような介護を行うことで、介護者の負担を減らし本人もいきいきとした生活が送れるでしょう。